松永伸司『ビデオゲームの美学』(慶應義塾大学出版会.2018)レビュー!

ま行の作家

概要

始めに

今日は松永『ビデオゲームの美学』についてレビューを書いていきます。

目次

序章:1.ならではの特徴2.問いをはっきりさせる3.方法をはっきりさせる4.意義をはっきりさせる

第一章ビデオゲームとは何か:1.定義とは何か2.ビデオゲームとビデオゲーム作品3.ゲームとして定義する4.選言的に定義する5.選言的定義を改訂する6.ビデオゲームの媒体7.「ビデオゲーム」の類義語

第二章ビデオゲームの意味作用:1.意味作用と行為2.受容とは何か3.作品と適切なカテゴリー4.ビデオゲームと芸術の存在論5.ビデオゲームの受容過程

第三章 芸術としてのビデオゲーム:1.芸術概念の成り立ち2.ビデオゲームは芸術か3.アートワールド4.娯楽と芸術5.ハイブリッドとしてのビデオゲーム

第四章ビデオゲームの統語論:1.表象、記号、内容2.記号システム3.統語論と意味論4.ビデオゲームの記号5.記号の素材6.インタラクティブ性とは何か7.「インタラクティブ性」への懐疑8.インタラクティブな芸術の定義9.相互作用の対象

第五章ビデオゲームの意味論:1.二種類の意味論2.ビデオゲームの二面性3.量化のドメイン4.区別の正当化5.内容の名前6.重ね合わせ

第六章 虚構世界:1.「フィクション」と「物語」2.フィクションの語り方3.虚構世界を表すこと4.虚構世界を作ること5.意図主義と慣習主義6.虚構世界の構成要素7.ビデオゲームフィクションの記号システム8.インタラクティブなフィクション9.行為の結果と行為の動機10.ミミクリ11.フィクションをこえて

第七章 ゲームメカニクス:1.ルール2.ゲームメカニクスの隠蔽と現実化3.行為のデザイン4.ゲーム行為を定義する5.自己目的的行為
6.美的行為7.ゲームメカニクスの構成要素8.ビデオゲームメカニクスの特殊性9.現実か虚構か――ゲームメカニクスの存在論10.制度としてのゲームメカニクス11.ビデオゲームの制度 

第八章二種類の意味論の相互作用:1.類比的推論2.謎解き3.シミュレーション

第九章ビデオゲームの空間:1.空間表象の分類論2.統語論的空間3.意味論的空間4.遠近法5.遠近法とゲームメカニクス6.統語論とゲームメカニクス

第十章 ビデオゲームの時間:1.時間は重なり合う2.時間の三層モデル3.層の対応4.セーブ、スピード、ターンベース

第十一章プレイヤーの虚構的行為:1.虚構的行為文のパズル2.経験説3.バーチャル説4.フィクション説5.インタラクティブなフィクション説6.現実説7.指示移行説8.ゲーム行為としての虚構的行為9.プレイヤーは人を殺しているのか

第十二章 行為のシミュレーション:1.シミュレーションとは何か2.モデル化3.虚構的なシミュレーションは可能か4.ビデオゲームシミュレーションの特徴5.行為のシミュレーションとしてのビデオゲーム6.行為のシミュレーションとインタラクティブなフィクション7.シミュレーションのリアリズム8.グラフィックとシミュレーション

終章 そして遊びの哲学へ:1.行為の芸術2.遊びの哲学

ビデオゲームをテーマにする、分析美学入門

 この著作はビデオゲームの美学でありますが、広く分析美学の入門書としても有用です。一章はビデオゲームの存在論がメインになっています。二章はビデオゲームの行為論です。三章は芸術哲学、アートワールド論になっています。四章、五章はビデオゲームの言語哲学、言語行為論、行為論です。六章は虚構言語行為論。七章はゲームメカニクスの行為論的分析。八章はハイブリッドな芸術ジャンルであるビデオゲームにおける、異なる意味論(フィクション、ゲームメカニクス)の相互作用について。九章は芸術の空間論、十章は芸術の時間論。十一章はプレイヤーに関する命題のパラドクスをめぐる虚構言語行為論。十二章、二つの意味論の相互作用、再現に関する行為論的分析です。このように、ビデオゲームを通じて、広く分析哲学、分析美学にふれることができます。

初学者には難しい

 分析哲学系の書籍全般そうなのですが、手頃な入門書がなく、いきなり個別の文献に当たるのに近い形となるため、初学者には厳しいです。この本も、読んでいて何の話をしているのかわからなくなりやすいと思います。そうした場合は、別の入門書を当たったり、同テーマに特化してついて書かれた入門書を読むと良いのかもです。

 例えば『ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』は存在論の部分で本作の読解の助けになります。

他の芸術ジャンルにも

 ビデオゲームはインタラクティブな芸術、ハイブリッドな芸術、複数芸術であり、他のメディアにおける芸術の存在論的考察にも議論を転用できます。

ビデオゲーム史ではない

 この著作は行為論中心の記述に関する理論ベースの分析美学的なビデオゲームの研究であって、ビデオゲームの歴史を俯瞰するものではありません。

 けれども、空間論に関してはある程度ゲームに触れていないとわかりずらいと思います。

関連文献

・ロバート=ステッカー著 森功次訳『分析美学入門』(勁草書房.2013):美学的再現、虚構言語行為、芸術の存在論について解説。

・戸田山和久『恐怖の哲学 ホラーで人間を読む』(NHK出版.2016):虚構言語行為論について解説。

・『ワードマップ現代形而上学: 分析哲学が問う、人・因果・存在の謎』:分析哲学の入門書ではこれが一番手頃。存在論などは参考になります。

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