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イスラエルとの今後
ハンガリーにとってイスラエルは不可分のパートナーでもないけど、ほかのEU諸国と比べるとイスラム系移民もほぼいないためにべったりつくことの政治的コストが全然ないのでそこを転換するインセンティブは少ないです。
ハンガリーはホロコーストに加担した側面あって 国は建前的に謝罪してるけどドイツのようには社会全体としてあまり反省してるわけではなくてむしろ未だにユダヤ人差別つよい地域多くて世論はイスラエルには無関心だから、イスラエルから離反する世論の制約も少なくはあります。
また対イスラエル制裁についてはハンガリーはスケープゴートにされてるだけで、ハンガリーがどうあれEUのイスラエルへの対応は大きく変わりにくいです。すでにマジャル氏もイスラエルについては従来通り協調する旨発していると一部メディアで報じています。
ハンガリーとイスラエルは利益関係からして緊密な連携とは言い難いし世論含めてお互いにとっていてもいなくても大勢には影響しない存在ではあります。ただハンガリーは世論が反グロ、反EU志向強いので、親イスラエルって国内政治の正当性資源としては政治コストが低くて便利な位置です。イスラエルにとってはEUの制裁自体そもそも脅威度高くなくて特に不可分の盟友でありません。ハンガリーは世論は反ユダヤより反イスラムのほうが結構強いから消極的には推せてもイスラエルに共感的世論はほぼないし、拗れてもお互いどうもならないからそういう意味でも便利な関係ではあります。
ウクライナとの関係
ウクライナについても前よりは軟化するだろうけど、ハンガリーの主流の保守はロシアはもっと嫌いだけどもハンガリー系少数民族問題の絡むウクライナもEUも嫌いだし、融資ブロックは解除するくらいになりそうです。左右を越えてハンガリー全体として、ウクライナ西部のハンガリー系住民への同化政策には滅茶苦茶怒ってるから、ウクライナに過度に協調するのは統治不安定化に直結するから経済や安全保障上の実利があっても政治コスト高くて難しいです。ハンガリーは国境外の自民族への共感かなりつよいので。
経済の今後
経済についてはマジャルもフィデス路線継承するとは思います。恩顧主義、民族主義的再分配国家みたいな、規模としては中福祉のなかでは薄い方くらいの福祉ショーヴィニズム路線を。左派も嫌いだけど、英米型古典的自由主義も伝統や民族、共同体といった最優先の価値に敵対的に受け取られやすい文化です。
皮肉だけど古典的自由主義や個人主義強めると”左派”的にうつりそうな歴史もあって、実際社会党なんてIMFに協調して2000年代後半に福祉主体的に削ったし、オルバーンの家族・縁故ベースの給付は”左派”による低福祉や緊縮への反感が正当性の資源でした 。ハンガリー国民の一般的な心性として”我々は世界の辺境で敵に包囲され傷つけられた民族であって、懸命に頑張る同胞や家族は我々で助ける”みたいな意識は強いから保守層にも自由主義、市場主義は受けにくいです。オルバーンもそれに訴えて再分配による利権、統治ネットワークを構築したので。
左派、リベラルと共闘する?右傾化?
ハンガリーは保守大国すぎるので左派・リベラル政党はどこもほとんどが政党要件満たしてない有り様だから、左派がティサに協調的に動いていたとしても選挙の大勢に全く影響ないし、だからティサが左派やリベラル勢力の選好を包摂しようとする理由がまずありません。
ハンガリーは右傾化というか元々権威主義的ナショナリズムがつよい地域でそれにソ連時代から左派への不信が募り続けた感じです。ハンガリーで90年代から2000年代半ば頃まで社会党が強かったのは、有権者に左派が多かったわけではなくて、旧ソ連時代の政党インフラをほぼ唯一継承できたから選挙に有利だっただけで、当時はリベラル政党のSZDSZやフィデスが競合していましたが、そうした党がリベラルだったのは社会党と連立を組む可能性があったからという要因が大きいです。しかし結局リベラルが票田にならなすぎてオルバーンとかの舵取りでフィデスもリベラルから保守に転換しました。
右派がそれまで勝てなかったのもただ担い手が脆弱だっただけで、組織力のあるフィデスが転向したら伸びたわけで、社会党の汚職で左派への幻滅が強まったとか有権者の選好の変化は少しあるけど、社会の選好が急に右傾したというよりは、保守の供給側が2000年代後半から安定するようになったのが大きいです 。社会党の2006年の嘘演説漏洩後の大規模抗議デモや選挙大敗も、左派でなかったらまず政党消滅クラスのダメージになるとは思えないので、そもそもハンガリーは民主化後は左派への構造的不信が極端につよい文化です。
敗因と勝因。ティサの背負う期待
ロシア・ウクライナ戦争でのロシア寄りのスタンスが主流保守派の信頼失いつつあったところに2024年の恩赦スキャンダルで保守派の不満が爆発してEUやNATOからのサンクションにも脆弱になってたから恩赦が最大のオルバーンの敗因です。経済とか生活苦は副次的と思われます。 マジャールの武器も恩赦の内部告発者としての地位でした。
実際ティサも親EU&NATO、反露、反汚職は掲げているけどほかのアジェンダは濁してるので、保守派の不満もそこに集約されていて、そこ以外は建前としても改革の意思は希薄に見えるし強くは期待されてもいない印象です 。保守派による権威主義への異議申し建てというよりは、親露とキリスト教的保守道徳へのオルバーンの裏切りに対する離反であって、反移民・キリスト教的価値観・国家主権重視というオルバニズムのコアは主流の有権者に支持されているから、ティサにはオルバニズムをオルバーン抜きでやることが期待されているきらいが強いです。
ティサもフィデスよりは右派色打ち出さないけど党首のマジャルもフィディス出身でスキャンダルをきっかけに離党して 野党結集した感じなので実際はお家騒動で、結局スキャンダルあったから保守派の無党派層がティサに流れた感じでもあります。フィデスが自滅したからフィディスではない保守ならどこでもいい票が、フィデスから分化したティサに流れた感じで、 外交についてはEUやNATOに表面的には協調的になりそうだけど、権威主義化のトレンドは従前と変わらない可能性も高いです。今後は多分メローニみたいな感じで、外交ではNATOやEUに協調しつつ、急進右派的、権威主義的トレンドは継承する印象があります。オルバンは極右、急進右派ポピュリズムの反グロ・親露のナラティブ吸収した結果ロシアに寄りすぎて、無党派の保守層離れていました。
急進右派とハンガリーの保守
東欧の主流である保守・右派の伝統的な感覚からすると反露はコアな価値観なのに、オルバンはそこを完全に外しちゃったから、ティサはそこを修整すると思われます 。今回の選挙もオルバンの急進右派における排外主義や反西側リベラリズムが拒絶されたわけではなくて、スキャンダルと親露、EUからの制裁と経済的苦境とかが敗因で、保守的反動的価値観はハンガリー社会に広く根付いていたものだから、ティサが政権を取ってもNATOやEUとの関係を調整するくらいにはなりそうです 。ハンガリーは、移民は欧米諸国と比べるとはるかに少ないのに排外的な意識強くてだからオルバンのナラティブが動員力高かった土地でもあります。もともと移民が社会問題にもなってなかったのに、簡単に急進右派の排外主義ナラティブが刺さって政権取った例はハンガリーくらいです 。
ハンガリーは文化が特殊で保守的な傾向のつよい東欧でも突出して保守的だから、そもそもリベラルな政党とか大抵政党要件すら満たしてなくて、現在は有効な勢力としてはほぼ無いに等しいです。
中道右派?
欧州政治における”中道右派”って実質的には”EPP所属でEUに協調的かそうでないか”に依存する括りだから、ドイツのCDUとか文化的レイヤーでも比較的リベラル寄りの右派もティサみたいなほぼ急進右派も一緒くたに”中道右派”になります 。ティサもこれまで明確に打ち出してるのはEU・NATO協調、反汚職、EU資金の凍結解除くらいだから、流石にEUに協調的に振る舞う分オルバンほどの露骨な法の支配の軽視、権威主義にはややストッパーがかかるけど、経済も文化も縁故主義も、基本はほぼ継承してメローニの外交をなぞるのが自然とは感じます。
私見ではフィディスよりはティサのほうがまだマシに見えるけど、ティサも今後の展望が不透明すぎるし外交を除いたフィディスの統治体制を改革するインセンティブが希薄だから楽観できる要素が少なすぎて、ポーランドでもあったPOのほうがPISより少しマシだけど実質ほぼ変わってないみたいなのを繰り返しそうでもあります 。
東欧諸国との比較
ポーランドのほかチェコとかスロバキア、ルーマニアとか東欧の政権交代のパターンが、1.権威主義政党が自滅2.「先の与党ではない」政党が変革を掲げて消去法で政権を取る3.構造を変えられず失望を買う4.権威主義政党が変革を掲げて復活、みたいなのをじわじわ権威主義を強化しながらループしています。ループのなかで有権者の極化&分極化と、権威主義の浸透&手口の洗練が進むだけで、政権交代して少しずつマシになるわけではなくて、むしろ悪いほうに進んでもいます。チェコにしてもポーランドにしても 。
ティサの勝利は手続き的正義が死んでいない指標としても短期的には肯定できるものの中長期的に希望的予測を持ちにくく、親露を除けば急進右派的価値観(伝統的家族、反左派&リベラル、反EU、反移民)はハンガリーに浸透していて有権者はそれを拒絶した訳ではありません。あくまでもスキャンダルや親露へのノーです。
特にポーランドと、あとチェコもそうだけど、一回急進右派に民主的制度を侵食されると制度を元に戻せなくなって権威主義体制に後継の中道勢力もフリーライドしやすい。トゥスクがいい例です。
ティサも外交を除けば権威主義的体質を改革するインセンティブがほぼなくて継承する合理性がずっと強いので EUとしてはハンガリーが戻ってきたという政治的成果を手放したくないし、ティサをフィデスにした制裁で追い詰めてフィデス復帰するのが最悪だから、内政で権威主義的チャネルを継承してもそれに西側も妥協する圧力が働くと思います。イタリア見ても親EUの権威主義への免疫はEUに弱いです。
選挙戦略
ハンガリーは農村部も多いし、ユーチューブ等SNSもオルバーンがステマ広告の飽和攻撃でインプレッション数については優位に立ってたろうから野党勝利への貢献は結構限られていて、主因はオルバーンに倣った地方での対面活動ではないかと思います。オルバーンも東側の独裁国家みたいに対抗勢力を弾圧する権限ないので。買収や脅迫や妨害はあるものの。
ハンガリーはスマホ普及率は高いしFacebookが広まっているものの、Facebookもメガフォンセンターとかによるオルバーン側のプロパガンダまみれでアルゴリズムがハックされてて、野党側の発信は埋もれやすいです。SNSやユーチューブ一般の話として新興政党が中堅政党になるのには決定的な役割を果たしうるけど、成熟期になるとアルゴリズム上費用に効果が比例しやすいメディアだから、支配的政党にそこに重心おいて勝つのは難しい感じがします。



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