PR

新井潤美『不機嫌なメリー=ポピンズ』(平凡社,2005)レビュー!

比較文学
記事内に広告が含まれています。

概要

始めに

 新井潤美『不機嫌なメリー=ポピンズ』についてレビューを書いていきます。

目次

はじめに

I ラブ・コメディ今昔
●嫌われるヒロイン?――ジェイン・オースティン『エマ』
ジェイン・オースティンという作家/オースティンのもっともスノビッシュなヒロイン
微妙な階級差へのこだわり/私生児は「問題なし」/「憎めないお嬢さん」としてのエマ
ビヴァリー・ヒルズ版『エマ』の『クルーレス』/ここが違う、パルトロウ版『エマ』
●エリザベス・ベネットが九〇年代のロンドンにいたなら?
――ヘレン・フィールディング『ブリジット・ジョーンズの日記』
『ブリジット・ジョーンズ』と『高慢と偏見』/翻案としての映画版
「ジェントルマン」とは/階級の「目印」__Uとnon-U
取り去られた「目印」、残された「目印」

II 働く女たち
●逆境の淑女、ガヴァネス――シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』
大衆文化と『サウンド・オブ・ミュージック』/雇い主とのロマンス
「ガヴァネス」という身分/不敵なガヴァネス/奔放な性格のバックグラウンドは
読者を満足させた穏便で理想的な結末
●なぜナニーは不機嫌なのか――P・L・トラヴァーズ『メアリー・ポピンズ』
ガヴァネス的英語/イギリスの「ナニー」/ロウアー・クラスの女性は母性本能が強い?
なぜ子供の養育を他人に任せるのか/メアリー・ポピンズはナニーの典型
ナニーと子供たちの別れ/児童文学と階級/ナニーという大きな存在
●コンパニオンから女主人へ――ダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』
名前のないヒロイン/階級と「コンパニオン」という仕事/主人を悩ませる「使用人問題」
投影された作者の「使用人問題」/嫉妬と誤解
「殺人」から「事故」へのハッピーエンド

III 階級と男たち
●ジェントルマンと教育――チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』
親の階級を超える子供たち/インテリではないアッパー・クラス/階級と教育
ピップの話し方の謎/ディケンズ作品映画のひそかな見どころ
階級社会のメロドラマと子供の出世/そしてディケンズの子孫も
●愛を勝ち取る「格下の男」――E・M・フォースター『眺めのいい部屋』
イギリス人の観光客/ワーズワースと「習い覚えた嗜好」
「海外のイギリス人」のステレオタイプ/観光客どうしの階級の溝
階級と郊外という場所/ヒロインをとりまく二人の男
細やかに描かれたミドル・クラスのスノビズム
●「手の届かない女」への偏執――ジョン・ファウルズ『コレクター』
ある練習問題/『コレクター』のストーリー/なぜ映画化が難しいか
ロウアー・ミドル・クラスという「喜劇的手法」
主人公はどのような「口調」で描かれているか/主人公と対照的なヒロインの言葉
描かれなかった階級的要素と、変容

IV イギリス人が異世界を描けば
●「ユートピア」は階級社会のゆく末?――H・G・ウェルズ『タイム・マシン』
階級とともに語られる作家/ウェルズという作家/ウェルズとマルクス主義
作品に投影された階級観/映画化作品と「時代の関心」
●悪の権化はなぜ「フツーの人」になったのか?
――アントニー・バージェス『時計じかけのオレンジ』
不満だらけの映画化作品/映画化作品のストーリー/なぜ結末が違うのか
「ステレオタイプ」からの脱却と言葉づかい/隠語と言葉遊び
『時計じかけのオレンジ』でのしかけ/階級を超えた主人公
悪の権化の「成長」が示すもの
●魔法使いにも階級がある――J・K・ロウリング『ハリー・ポッター』
イギリス児童文学と「学校もの」/パブリック・スクールは地獄?
ミドル・クラス層の増大と「学校もの」の隆盛/「別の世界」への憧れ
日英でのとらえかたのズレ/配役とアクセント

V マイノリティたちのイギリス
●日系作家の描いた「古きよきイギリス」――カズオ・イシグロ『日の名残り
現代バトラー事情/舞台のバトラー/イシグロのニッポン描写
「型」で書かれた『日の名残り』/イシグロの「無国籍性」/「本物のイギリス」像へ
●「新しいイギリス人」と越境する新世代――ハニーフ・クレイシ『郊外のブッダ』ほか
ウェスト・エンドの劇場で/多文化国家イギリス/「サバービア」という舞台
新しいミドル・クラスたち/越境する新世代

階級社会英国の言語、家事使用人、男性、ファンタジー、マイノリティ

 階級社会英国を舞台とする作品について、社会史的な部分も踏まえた解説集です。もっぱら、言語、家事使用人のバリエーション、男性の立身出世、ファンタジー・SFジャンルにおける英国社会の再現、マイノリティ英国人の文学というテーマについて解説しています。体系的に英国社会について学べる訳ではないですが、取り上げられている作品も豊富で楽しいエッセイです。

広く浅く。体系性には乏しい

広く浅くな作品論、作家論です。もう少し詳細な読解のためには別の文献が必要になりそうです。また、英国社会、文化について体系的に学べるものではなく、階級制度やその中での実践、慣習にテーマを絞っています。

コメント

You cannot copy content of this page

タイトルとURLをコピーしました