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保守主義とは何か。バーク、オークショット。共同体主義との接点

政治,国際関係論
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バークの保守主義

 保守主義とは単なる政治的立場や政党のことではなく、社会や文化における変化・革新に対して慎重な態度をとる思想的立場を指します。

 保守主義の古典的源流はエドマンド=バークです。

 バークはフランス革命を批判し、社会は契約ではなく、過去・現在・未来の世代の連帯で、理性や理念で社会を再構築しようとする急進的啓蒙主義は、人間の有限性を無視する危険な試みだとしました。伝統・慣習・制度には、長い歴史を通じて蓄積された暗黙の知があるとするのです。

 ここで保守とは、過去に固執することではなく、経験知に裏づけられた秩序を大切にし、慎重に変化させるという態度です。

オークショットの保守主義

 マイケル=オークショットは、20世紀保守主義のなかでもとりわけ哲学的・形而上学的な基礎づけを与えた思想家として重要です。オークショットははイデオロギーとしての保守主義ではなく、生の様式としての保守主義的態度を定義しました。

 オークショットにとって保守主義とは、政治的プログラムではなく、世界に対するある種の気質です。保守的であるとは、既に手にしているもののうちに価値を見出し、それを享受することに満足する態度であって、保守主義とは「変化を拒否する」ことではなく、既に存在する秩序や経験の中に意味を見出す能力のことなのです。変化を求める前に、まず現にあるものの価値を理解することが大事なのです。

 オークショットの有名な対立軸は、合理主義的政治vs経験的政治です。合理主義的政治(社会主義的設計主義、理想的リベラリズムなど)は、社会を理性の原理から再構築しようとします。オークショットはこれを過剰な抽象化による現実の破壊とみなし、政治を航海にたとえて、政治は目的地を設定して社会を導く活動ではなく、現実を維持しながらうまく操縦していく実践だ、といいます。

 またバークと同じく、社会の秩序を支えるのは「理性」ではなく伝統的実践だと考えます。伝統とは、明文化された原理ではなく、繰り返しの中で身についた実践的知恵です。それは変化を拒むものではなく、過去の積み重ねをもとにした柔軟な適応の連続です。

 オークショットは国家を「道徳的な目的を実現する装置」ではなく、人々が秩序ある共存を行うためのルール体系と捉えました。国家の役割は徳の形成ではなく、自由で安定した秩序の維持です。ここで道徳的共同体として国家を理想化する社会的保守主義とも距離をとり、むしろ自由主義的保守主義に近い立場をとります。

共同体主義

 共同体主義とは、1980年代以降にロールズ的自由主義への批判として登場した思想潮流であり、個人を自律的で文脈から切り離された存在として想定する近代的個人主義に対して、個人の自己理解や価値判断は歴史的・文化的・共同体的文脈の中で形成されるという立場をとります。

 共同体主義は人間の倫理的実践は普遍的原理や抽象的権利の体系に基づくものではなく、具体的共同体の伝統・慣習・語り・制度などに媒介されて初めて意味をもつとするのです。したがって共同体主義は、人間存在の関係的構造を強調し、道徳的善を共同体の実践の中で生きられる徳として捉え直そうとする点で、リベラル個人主義に対する批判的転回を含みます。

 こうした立場は、規範倫理の構造において保守主義的です。保守主義の根本にあるのは、社会秩序や道徳的価値が理性の設計や抽象的理念によって外部から与えられるものではなく、歴史的経験と慣習のなかに内在的に形成されるという認識だからです。

 バークがフランス革命の合理主義的改革を批判し、社会を過去・現在・未来の世代の連帯として理解したように、共同体主義もまた、道徳的秩序を個人の自由な選択の総和としてではなく、世代的・文化的継承のプロセスとして理解します。この点で、両者は共に抽象的普遍主義への懐疑と、歴史的文脈に埋め込まれた価値の尊重という原理を共有します。

 共同体主義は単なる秩序維持のイデオロギーではありません。バーク的保守主義が変化を慎重に行うための政治的知恵であるのに対し、共同体主義はより規範的・倫理的で、近代以降に失われた共同体的徳の回復を志向します。そのためマッキンタイアのような思想家においては、古代アリストテレス的な徳倫理の再生が試みられ、近代リベラリズムの中立的国家や普遍的正義の理念に代わって、共同体ごとに異なる共通善の探求が重視されます。

 このように共同体主義は、個人主義的自由主義が道徳的に薄い倫理を志向するのに対し、厚い倫理を共同体の文脈に基づいて再構築しようとする運動といえます。

 共同体主義と保守主義はともに、人間理性の限界と社会的慣習の知恵を認め、抽象的原理による社会設計や価値の普遍化に対して懐疑的です。ただし、保守主義が主として社会秩序の安定と漸進的変化を志向する政治的実践理性の思想であるのに対し、共同体主義は徳や善の回復をめざす倫理的実践理性の思想です。保守主義が秩序をいかに維持するかに焦点を当てるのに対し、共同体主義は秩序の中でいかに善く生きるかを問います。

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